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佐村河内氏の聞こえに関する問題についての声明

特定非営利活動法人 東京都中途失聴・難聴者協会
理事長 新谷友良

佐村河内氏の聞こえに関する問題に関しては、3月7日に佐村河内氏本人の記者会見が行われ、現在の聴力レべルが身体障害者手帳の認定レべルに満たないので身体障害者手帳を返上する旨説明がありました。これに対して記者は「今、私の声は聞こえないですか?」と質問し、佐村河内氏は「耳元で、60デシべル以上の音で何かを言われても、音はわかるが言葉としては聞きとれない」と答えています。

佐村河内氏がゴーストライターを使って作曲をした問題が聞こえへの誤解に発展し、私たち聴覚障害者は大変傷ついています。「実は聞こえているのでは?」という疑いの目にさらされ、この記者の質問のように、「身体障害者手帳を持っていなければ聞こえるのでは?」という誤解がいま社会に急速に広まっています。

音が聞こえても言葉を聞き分けることが出来るとは限りません。軽度や中等度の難聴でも言葉の聞き分けが難しい方が多くいます。また、聴覚障害者は、「聞こえ」について周りの影響を強く受けます。話し手が少し離れた場合や早口で話された場合は聞き取りが難しく、周りに騒音が多いところでは聞き取りがなおさら困難です。

また、身体障害者手帳を持っていなければ聞こえているわけでは決してありません。現在の手帳制度では、1m離れたところでの普通の会話音が聞きとれない程度では手帳を取得できません。佐村河内氏のように、言葉の聞き分けができなくても一定程度音が聞こえていれば手帳を取得することができません。その結果、我が国の手帳保持者は僅かに約35万人に止まっており、数百万人以上いるといわれる聴覚障害の多くは身体障害者手帳を取得できず、福祉サービスの対象外になっています。

聞こえの障害は外から見えないため、社会の理解が大変遅れています。私たちは今回の事件を契機に、聞こえについての正しい理解が社会に広まることを切望します。そして現在政府で検討されている聴覚障害の認定方法の見直しが、障害者福祉サービスを受けられる人の範囲を狭める方向ではなく、ふつうの会話や生活音の聞き取りが困難な人を対象に含める世界保健機関(WHO)の基準に合った聴覚障害の認定となることを強く要望します。

以上

朝日新聞 2014年3月28日朝刊に本件に関する記事が紹介されました。

東京新聞 2014年3月28日朝刊に本件に関する記事が紹介されました。

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